従業員のための「福利厚生費」とは?条件や経理処理について
福利厚生費とは、給料以外に企業が従業員のために支出する費用のことで、経費計上が可能です。しかし、福利厚生費に計上するためには一定の条件があります。福利厚生費とはどんな費用なのでしょうか。似た費用との違いや経理処理について紹介します。
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福利厚生費とは
福利厚生費とは、企業が従業員のために給与や賞与以外に、サービスや対価の提供に要する費用のことをいいます。
福利厚生費は「法定福利費」と「法定外福利費」の2種類
福利厚生費は大きく分けると「法定福利費」と「法定外福利費」の2種類に分類されます。それぞれの特徴は次のとおりです。
・法定福利費
法定福利費は、公的医療保険制度による健康保険料・介護保険料、公的年金制度による厚生年金保険料、雇用保険制度や労災保険制度による雇用保険料・労災保険料などのうち、企業負担分の費用を指します。「法定福利費」という勘定科目で仕訳を行います。
・法定外福利費
法定外福利費は、企業が従業員のために独自で定める福利厚生費です。企業の意向で支出先を決定できるため、各企業で内容は異なります。例えば、社員旅行の費用、従業員の結婚祝い金や見舞金などが該当します。
福利厚生については、以下の記事も併せてご参照ください。
福利厚生にはどんな種類がある?導入のメリットや事例も紹介
福利厚生費の平均額
一般社団法人日本経済団体連合会が公表した「2019年度福利厚生費調査」によると、法定福利費の従業員1人あたりの1カ月平均は次のとおりです。
・法定外福利費:24,125 円
内訳を見ていくと、最多は「住宅関連」が11,639円、次いで給食や財産形成などの「ライフサポート」が5,505 円です。
近年の傾向は、医療・健康費用の構成割合が増えていることです。医療・健康費用の金額は3,187円で先のふたつほど高くはありませんが、法定外福利費の13.2%を占めており、一定の存在感を持ちます。従業員のヘルスケアに力を入れている企業が増加しているようです。
福利厚生費の支出額に上限はありません。ただし、支出する際の規定は必要で、社会通念上妥当な額を超えてしまうと福利厚生費として認められないことがあります。例えば、従業員へ支給する通勤手当には、非課税限度額があります。また、支給した食事が福利厚生費として認められるためには、次のふたつの要件を満たなさなければなりません。
1:役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担している
2:食事額から役員や使用人が負担している金額を差し引いた金額が1か月あたり3,500円以下
なお、福利厚生費は「従業員」に対して支出するものであるため、個人事業主の場合は原則として対象外です。個人事業主で福利厚生費が認められるのは、家族以外の従業員を雇用している場合に限られます。
福利厚生費と似た費用
福利厚生費と似た費用として「交際費」「消耗品費」があります。これらの費用との違いを見ていきましょう。
福利厚生費と交際費の違い
交際費とは、得意先や仕入先など社外の関係者に対して行う、接待や贈答などにかかる費用のことです。福利厚生費にも「食事代」があり、「結婚祝い金や見舞金」も贈答と似た費用といえます。支出内容としては似ていますが、福利厚生費は対象が従業員である点が大きな違いです。
福利厚生費と消耗品費の違い
従業員休憩室に常備するお茶や、従業員が使用するトイレの石けん・トイレットペーパーなども、福利厚生費とすることが可能です。一方で、上記の支出は消耗品費として計上することもできます。消耗品費とは短期的に消費する物品の支出です。ただし、消耗品費は広く業務にかかわる消耗品の費用を指します。福利厚生費としての消耗品費は、従業員が使用する物品のみに限られます。
福利厚生費が認められる条件や費用例
福利厚生費が認められる条件は、次のとおりです。
1. 給与・現金ではないこと
2. 従業員全員を対象としていること
3. その支出額が社会通念上妥当な額であること
規定上、全従業員を支給の対象としていればよく、実際に全員が支給を受ける必要はありません。
福利厚生費に該当する費用例
すでに挙げたもの以外で、福利厚生費に該当する費用例には次のようなものがあります。
・ 住宅手当
社宅にかかる費用や持ち家の家計にかかる費用です。
・ 社内イベントでかかる費用
社内運動会や納涼会など、従業員全員が参加対象となるイベントが対象です。
・ 社員旅行でかかる費用
旅行の期間が4泊5日以内(海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内)であることや、旅行に参加した人数が全体の人数の過半数であることなどが必要です。
・ 新年会や忘年会でかかる飲食費
従業員全員が参加対象となる場合が対象で、2次会や3次会は該当しません。
・保養施設やスポーツクラブの利用料
従業員が利用できる施設が対象です。
・健康診断の費用
一般的でない検査が含まれている場合や、費用が一般的な基準を大きく超える場合は対象外とされることがあります。
・福利厚生代行サービスの費用
福利厚生代行企業が提供する福利厚生サービスの利用料も該当します。
上記に加え「出張手当」も、給与と混同されやすいのですが福利厚生費に該当します。出張手当は、交通費や宿泊費などの実費とは別に支払われるもので、宿泊を伴う遠地へ赴く負担を考慮して支給される福利厚生費となります。ただし、出張先や業務負担を考慮したうえで、妥当な額を設定しなければなりません。
福利厚生費の経理処理
福利厚生費の経理処理について見ていきましょう。まず、勘定科目はそのまま「福利厚生費」とし、次のように計上します。
【例 福利厚生費として休憩室用のお茶を1,000円で現金購入した】
(借方)福利厚生費 1, 000円 (貸方)現金 1, 000円
法定福利費の場合は、勘定科目「法定福利費」を使用します。福利厚生費と科目名が似ているので、混同しないように注意が必要です。複雑な処理ではありませんが、次のような点を踏まえておくとよいでしょう。
・支出の内容によって消費税課税取引か非課税取引かに分かれるが、福利厚生費は原則、課税取引である
・従業員への祝い金・見舞金・香典など一部は非課税取引となる
ギフトカードは福利厚生のために活用できるが経理処理に注意
商品券やギフトカードを、従業員の福利厚生のために活用することが可能です。例えば、創業記念品や永年勤続表彰でギフトカードを渡すようなケースです。ただしその場合、企業側の意図する効果が「福利厚生」だったとしてとしても、経理処理上は給与として処理しなければならない点に注意しましょう。これは、ギフト券や商品券が現金と同じように使用できることが理由です。
商品券やギフトカードの経理処理については、以下の記事をご参照ください。
商品券やギフト券は経費になる? ケースごとの経費処理を紹介
福利厚生費を正しく理解し、経理処理をしっかり行おう
福利厚生費は、法定福利費と違い、対象が幅広いです。企業が独自に従業員のために支出する費用であるため、どこまでが福利厚生費として計上できるのかがあいまいになってしまいがちです。運用担当者が福利厚生費の基本知識を理解することはもちろんですが、交際費や消耗品費との違いを社内で明確にすることも重要です。正しく経理処理をしたうえで、従業員にとって価値のある福利厚生を実施しましょう。
先に紹介したように、ギフトカードを祝い金や見舞金として活用する方法があります。ギフトカードは現金のように使えるので喜ばれる一方、給与として経理処理をしなければなりません。従業員の利便性を重視してギフトカードを利用することによって、担当者が負担に感じる場合もあります。
Visa加盟店で利用できる「Visaギフト バニラ」のギフトカードは、金券のデジタル管理や、有効化を行うまで金券管理が不要なため、経理担当者の負担を軽減できます。カードタイプの「バニラVisaギフトカード」は、実店舗とオンラインショップの多くの場所で利用できるため、福利厚生で贈呈する場合にもおすすめです。
また、「Visa eギフト バニラ」は、 Visaのオンライン加盟店で利用できるデジタルギフトです。ぜひ自社の福利厚生として、検討してはいかがでしょうか。
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