決算賞与を支給したほうが節税になる? 税金の計算方法や注意点
決算利益が大きかった場合に利益還元を行う決算賞与は、従業員の意欲向上に効果的です。それだけではなく、決算賞与には節税効果も期待できます。ただし、節税効果を得るためには、税制上の要件に注意しなければなりません。そこで今回は、決算賞与の概要や税金の計算方法を解説するとともに、決算賞与と支払う税金を比較して、決算賞与を支給すべきかどうかの判断に役立つ内容を紹介します。
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決算賞与の概要
該当年度の業績が好調だった場合に、業績に応じて臨時に支給される賞与が決算賞与です。通常の賞与は夏と冬に支給されることが多いですが、決算賞与は年度の利益を従業員に還元する恩給的賞与であるため、決算時期に支給されます。支給額の算出方法は企業によって異なり、決算賞与を採用していない企業もあります。そのため、特に相場や平均額はないと考えたほうがよいでしょう。
企業が決算賞与を支給するメリットとデメリットは次のとおりです。
決算賞与を支給するメリット
●仕事に対するモチベーションの向上
●従業員エンゲージメントの向上
●企業の節税効果
節税効果とは、法人税の納税額を圧縮する効果のことです。企業利益には法人税が課されますが、利益を決算賞与として支出することで損金算入が可能となります。損金算入により利益を減らすことで、納税すべき法人税の金額も減らすという考え方です。
決算賞与を支給するデメリット
●決算期に、税金処理や支給手続きなど経理の手間が増える
●法人税は減少するが、会社に残る資金も減少する
決算賞与のメリット・デメリットや、決め方について詳しくは以下をご参照ください。
決算賞与の支給要件や平均額は? 支給する時期やメリットも紹介
決算賞与にかかる税金等の計算
従業員に支給する決算賞与には税金等がかかります。具体的には厚生年金、健康(介護)保険、労働保険(雇用保険・労災保険)にかかる保険料と、所得に対する所得税が該当し、これらを算出、天引きしたうえで支給額を決定するのです。計算方法を紹介します。
決算賞与で算出すべき社会保険料
まず、賞与にかかる厚生年金保険料と健康(介護)保険料を算出します。
●「賞与にかかる保険料 = 標準賞与額 × 保険料率」
厚生年金保険料、健康(介護)保険料は、標準賞与額とそれに対応した保険料率を使用して計算します。標準賞与額とは、税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた額のことで、賞与が支給される月毎に決定されます。
保険料率は事業ごとに定められているため、該当する保険料率を乗じて計算します。なお、保険料算出のもととなる標準賞与額には上限があります。上限金額は、健康保険については年間累計額573万円(毎年4月1日から翌年3月31日までの累計額)、厚生年金保険については1ヶ月あたり150万円です。
続いて、労働保険のうち、雇用保険料を算出します。
●「雇用保険料 = 賞与総額 × 保険料率」
労働保険の保険料は、労働者に支払う賃金総額に所定の保険料率を乗じて計算します。ここでの賞与額とは、税金や社会保険料を差し引く前の金額です。
なお、労働保険のうち労災保険は全額事業主負担ですが、事業主が支払う保険料を計算する際の計算式は上記と同じです。
源泉徴収すべき税金
社会保険料を差し引いた額に、税金として所得税がかかります。所得税は社会保険料を差し引いた賞与額に、所定の「賞与の金額に乗ずべき率」を乗じて決定します。乗ずべき率は扶養家族の人数や賞与額により異なり、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」によって確認します。
これらの計算により所定の金額を天引き・源泉徴収したあとの額が、実際に従業員が受け取る賞与額です。
賞与の計算について詳しくは、以下をご参照ください。
賞与はどう決める? 計算方法や支払い対象、種類などを解説
企業が決算賞与を支給する際の経理上の注意点
決算賞与を利益が生じた期中に支払えば、問題なく損金算入できます(※)。しかし、当期中の支払いが難しいケースもあるでしょう。支払いが次期にずれ込む場合に、当期の損金として計上するためには、税制上次の3つの要件を満たす必要があります。
※労働協約または就業規則により定められている(決算賞与の)支給予定日が、次期となっている場合を除く
損金算入で注意したい3つの要件
ここで紹介する3つの要件を満たしていることを、客観的に証明できるようにしておくことが重要です。というのも、決算賞与は節税効果があるため、悪用することも可能だからです。
例えば、決算賞与を支給していないのに「支給した」と見せかけ、不正に利益を圧縮して脱税を図る行為です。税務署側としては、決算賞与が悪用されていないか警戒する必要があるため、決算賞与が税務調査の対象となることがあります。以下3つの要件を確実に理解して、税務調査を受けた場合は関係資料を適切に提示できるようにしておくとよいでしょう。
1:支給するすべての従業員に支給額を同時期に通知していること
通知内容については規定がないため、口頭で通知するのみでも問題ないかもしれません。しかし、税務調査が入ったときのことを考えると「書面で通知する」「通知を受けた旨の署名を残す」など、通知をした記録が残る方法をとるのがよいと考えられます。
2:決算日の翌日から1ヶ月以内に支給すること
支給方法についても規定はなく、手渡しでも問題ないかもしれません。しかしこちらも、税務調査を受ける可能性を考えると、支給の事実が残る銀行振り込みがおすすめです。
3:経理上、当期に損金経理を行っていること
支給そのものが次期にずれ込むとしても、当期のうちに「未払金」として損金計上しておくことが必要です。
税金と決算賞与を比較する場合の注意点
多くの企業は、「利益が出ても税金が多くかかってしまうのならば、従業員に還元したほうが企業にとって有益だろう」との考えで決算賞与の支給を検討すると推測されます。しかし、純粋に資金面から見ると、決算賞与を支給することで手元資金が減ってしまうことがあります。簡易的な例で資金の流れを見てみましょう。
【資金額の例】
・当期利益 1,000万円
・法人税率 25%
上記のケースでは、決算賞与を支給しないときの法人税額は250万円(1,000万円×25%)です。
一方で、決算賞与を300万円支出した場合は、次のようになります。
・当期利益 1,000万円 - 300万円 = 700万円
・法人税額 700万円 × 25% = 175万円
つまり、このケースで、法人税額だけを見るならば75万円の節税(250万円-175万円)になっているといえます。しかし、節税できた額以上の金額を決算賞与として支給しているため、手元資金の額は減ってしまいます。
※法人税の税率は、法人の区分や資本金によって異なります。
上記の例では、法人税額を少なくできても、手元資金が減ることにはなります。しかしその反面、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上の観点から見れば、決算賞与を支給して良かったとも判断できます。
決算賞与は税金面や手元資金など、総合的な視点で判断を
決算賞与は、企業が支払う税金面だけからいえば節税効果がありますが、手元資金が減る可能性があります。また、節税効果を得るためには、損金算入について税法上の要件を満たす必要があります。さらに、決算賞与から差し引く社会保険料や所得税などの経理処理を適切に行うことも必要です。
このように、資金管理の注意点や手続き上の手間はありますが、従業員にとって決算賞与は大きな魅力となるはずです。さまざまな観点から決算賞与のメリット・デメリットを比較したうえで導入の可否を判断しましょう。
決算賞与として、全従業員にギフトカードを支給する選択肢もあります。Visa加盟店で利用可能な「Visaギフト バニラ」 は、受け取った人が自由に使い道を決められます。実店舗とオンラインショップの圧倒的な利用先を誇る、プリペイドカードタイプの「バニラVisaギフトカード」と、メールで簡単に送ることができるデジタルタイプの「Visa eギフト バニラ」の2種類があります。
好みに応じて2種類から選択できます。決算賞与として現金ではなく、従業員のために特別感を演出したギフトを贈りたい企業におすすめです。